釧路から根室、本土最東端の納沙布岬へ 🌊


2016年11月
今回の目的地は、国後島や歯舞諸島などの北方領土を望む、根室の納沙布岬。 釧路駅からJR花咲線に乗って根室駅へ、バスに乗り継いで納沙布岬を目指します。 因みに納沙布岬は、日本最東端ではなく本土最東端です。

道東

5時20分に釧路駅に着くと、道東の日の出は早いが、まだ真っ暗だ。 売店は閉まっていて駅弁は買えない。 駅近くにコンビニはあるが、やっぱり地元のものを食べたいので、お腹はすいているが我慢する。 寒いので温かい缶コーヒーを買い、ホームへの階段を上がると、根室行きの列車はすでに1両で入線、エンジンを震わせている。

釧路駅

釧路から根室までは近いようなイメージだが、実際には135kmもあり、列車で2時間半もかかるので、5時35分の始発「快速はなさき」に乗る。 眠いが次の列車が3時間後では仕方がない。 平日の早朝なので乗客は10人くらいである。 シートには丹頂鶴や灯台が描かれて、いかにも北海道らしい。

列車の座席

釧路を出発し、隣駅の東釧路で網走へ向かう釧網本線と分かれると、街から離れて丘陵地帯の樹林が30分ほど続く。 やがて白々と夜が明け、牧草地に変わって門静駅を通過すると太平洋に出て、アイカップ岬の断崖の右に大黒島が見えてきた。 東釧路駅からノンストップで44kmを走行し、厚岸に6時20分に到着。 それにしても北海道の列車は暖房が効きすぎていて暑いほどだ。

アイカップ岬と大黒島

厚岸は上り下りが交換できる駅で、向いのホームには2両編成の釧路行きが停車していて、高校生が10人ほど乗っている。 釧路市街まで通っていて、部活の朝練があるのだろう。

厚岸駅

厚岸(アッケシ)とはアイヌ語で「カキのいるところ」を意味し、道の駅などで牡蠣のグルメが堪能できる。 牡蠣の殻が堆積してできたという鳥居が立つ島もあったりする。 名産の生ガキを食べたいと思うが下車する訳にはいかない。

牡蠣

厚岸でほとんどの乗客が下車して車内はガラ空きになったが、この先はこれぞ北海道と言える車窓だ。 厚岸湖を回り込むと別寒辺牛湿原の絶景が広がっており、ヨシが茂る川沿いを列車は進む。

車窓

外からも見たい衝動に駆られて、別日にこの周辺を歩いて散策してみた。

別寒辺牛湿原を走る列車

別寒辺牛湿原はラムサール条約の登録湿地に指定されていて、川は岸壁工事などが施されておらず、太古のままの風景だ。

別寒辺牛湿原

厚岸から25分ほどで霧多布への玄関口である浜中に着くと、ホームにルパン三世が立っている。 ここは原作者モンキーパンチ氏の故郷だという。

浜中駅

この路線には、ルパン三世の登場人物がラッピングされた車両も走っている。 花の湿原とも呼ばれる霧多布にも一度行ってみたい。

ルパン三世のラッピング車両

かつて標津線(廃線)が発着していた厚床(あっとこ)に7時10分着。 かわいらしい名前の駅だ。 この列車は快速だが、ここから根室までの7駅はすべて停車する。 花咲線には何度か乗ったことがあるが、厚岸(あっけし)と厚床(あっとこ)は紛らわしい。 初田牛〜別当賀へと起伏のある原野を走り、再び海が見えてくる。 各駅で高校生を拾っていくと落石に7時38分到着。

落石駅

落石駅で高校生がたくさん乗り込んできた。 走り出すと樹間に太平洋に浮ぶ無人のユルリ島が見え隠れする。 ユルリ島はアイヌ語で「鵜が居る島」だが、野生の馬がいるという。

沖合いのユルリ島

落石の隣駅が昆布盛という名のとおり、この辺りは沖合いでの昆布漁が盛んなのだが、かつての船にはモーターがなかった。 そのため、獲れた昆布を本土まで運ぶ労力や手間がかかるので、ユルリ島に運び上げて干していたそうだ。 その際の労力として馬が必要だったのだが、モーター付きの船が普及すると、馬はユルリ島に置き去りにされたという。 一時は子孫が繁栄してたくさんの馬がいたそうだが、現在はかなり少ないなったらしい。

ユルリ島と七つ岩

昆布盛駅をすぎると牧場の中を走り、大きな道産子馬がたくさん見える。 牧草地が多いのは海霧で作物が育たないのが理由らしい。

道産子馬

日本最東端駅である東根室に7時58分着。 鹿児島の西大山駅はシルエットの美しい開聞岳が見え、日本最南端駅に相応しいが、東根室駅は住宅地にあってイメージとは違う。 30〜40人ほどの高校生が全員下車、通学のための駅のようだ。 終点の根室駅には8時1分に到着。 納沙布岬行きのバス乗場へ向かう。

根室駅

納沙布岬行きのバスは8時20分発、15分ほど時間があるので近くを散策。 駅前はとても広いがガランとしている。 バスには往復の割引乗車券があるが、途中で降りるかもしれないので普通運賃で払うことにした。 市街地をすぎると笹の草原につくられたような道が続き、納沙布岬には9時5分に到着。

納沙布岬バス停

雲っていたが視界はまずまずで、歯舞諸島が見える。 納沙布岬は霧が出やすいと言うので運がよいのかも知れない。 まずは北方領土の歴史が学べる北方館、火が焚かれている四島のかけ橋などを見学する。

四島のかけ橋

明治5年、北海道で最初にできた灯台の裏に小屋が建っており、風が強いので避難すると野鳥の写真が展示してある。 「のさっぷ岬マップ」が貼ってあったので、参考にいろいろと見て回ることにした。

納沙布岬の標柱と灯台

地図と合わせて見ると、納沙布灯台の左が秋勇留島、さらに左へ順に萌茂尻島、勇留島、灯台が立つ貝殻島、水晶島と分かる。 とにかく、平坦な島ばかりである。 遠くには、国後島の爺爺(ちゃちゃ)岳、羅臼山も薄っすらと見えた。

納沙布岬灯台

納沙布岬から貝殻島まではたったの3.7km、水晶島までは7kmにすぎない。 水晶島にはロシア警備隊の監視所やレーダーも見える。

水晶島(左)と灯台が立つ貝殻島(右)

貝殻島では昆布漁が許される時期があり、その様子を写したフォトコンテストの作品が展示してある。

貝殻島の昆布漁

朝から何も食べていないので空腹だ。 レストハウスが開いていたので、せっかくなので貝殻島で獲れた「貝殻昆布」の入ったラーメンを注文。 帰りのバスの時間までは1時間以上あるので、バス通りを行けるところまで歩いて、最東端を満喫することにする。

レストハウス

納沙布岬を後にして、歯舞地区への5kmほどを歩いていく。

納沙布岬を後にする

北方領土を望める展望台である地上96mのオーロラタワーが目を引くが、その足下には本土最東端の納沙布神社がひっそりと建っている。

オーロラタワーと納沙布神社

納沙布岬から20分ほど歩くと、珸瑤瑁(ごようまい)地区に入る。 本土最東端の珸瑤瑁小学校は閉校。 この辺りで子どもの姿をまったく見なかったが、昔はたくさんいたのだろう。 戦前の根室は千島への拠点でだったわけで…。

珸瑤瑁小学校

電柱には、「返せ!北方領土」の看板が並んでいる。 車は少し通るが、歩いている人はまったくいない。

返せ!北方領土

珸瑤瑁金刀比羅神社から5分ほど歩くと、郵便局が見えてきた。

金刀比羅神社

日本最東端の郵便局と建物にも表示されている。 記念に風景印を捺してもらう。

珸瑤瑁郵便局

風景印には、納沙布岬灯台と本土で一番早い朝日が描かれている。

珸瑤瑁郵便局の風景印

珸瑤瑁から歯舞地区に入ると海沿いに集落が見えるが、とても寂しい雰囲気だ。 貝殻島での昆布漁は、ここから出航するようである。

歯舞

バスの時刻が近づいてきたので、歩くのをやめてこの辺りを散策することに。 高台に建つ歯舞神社からは海を見渡せる。

歯舞神社

歯舞には郵便局、コンビニ、スナック、喫茶店などがあり、ここが最東端の街といった感じだ。 写真のスナック婆は、ママが婆さんなのだろうか、それとも意表をついてBARなのか。 隣には寿司屋もある。

スナック

歯舞郵便局の前からバスに乗ることにした。 右奥に見えるのは、最東端のガソリンスタンドだろうか。 12時3分のバスに乗り、根室駅へ戻る。

歯舞局前バス停

12時30分に根室市街で下車して、列車の時間まで1時間ほど適当に散策する。 地図に弁天島というのがあるので、坂道を下って港まで見に行く。 根室港を守る防波堤の役割をしている無人島で、神社が建っている。 その後も根室の街を歩くが、とにかくだだっ広くて、寂しい雰囲気が漂う。

弁天島

根室駅に13時すぎに戻ってきたが、釧路行きの列車は13時32分発である。 なので、最東端の旅のついでに、隣駅である東根室駅まで歩くことにした。 東根室は日本最東端駅だ。

根室駅

できるだけ線路から離れないように歩いていく。 跨線橋の上から東根室駅が見え、ちょうどよいタイミングで根室行きの列車がやってきた。 この折り返しに乗るのだが、時間が迫ってきたので軽く走って東根室駅へ向かう。

東根室駅と列車

13時30分に東根室駅に着く。住宅地にある駅である。 「にしわだ」の表示が新しいのは、隣駅だった花咲駅が最近廃止になったためだ。

東根室駅と列車

すぐに釧路行きの列車が来て乗車する。 先ほど跨線橋から見た車両だ。 平日の昼すぎで空いていたので、釧路までの2時間半、ゆったりと車窓が堪能できた。

東根室駅と列車

途中のトンネル内でエゾシカと接触があり、10分ほど遅れて釧路駅には16時に到着。 外に出ると雨が本降りになっていた。

釧路駅



旅行記
拙い文章ですが、お読みいただければ幸いです。
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