今回の目的地は、国後島や歯舞諸島などの北方領土を望む、根室の納沙布岬。 釧路駅からJR花咲線に乗って根室駅へ、バスに乗り継いで納沙布岬を目指します。 因みに納沙布岬は、日本最東端ではなく本土最東端です。
![]() 道東 |
5時20分に釧路駅に着くと、道東の日の出は早いが、まだ真っ暗だ。 売店は閉まっていて駅弁は買えない。 駅近くにコンビニはあるが、やっぱり地元のものを食べたいので、お腹はすいているが我慢する。 寒いので温かい缶コーヒーを買い、ホームへの階段を上がると、根室行きの列車はすでに1両で入線、エンジンを震わせている。
![]() 釧路駅 |
釧路から根室までは近いようなイメージだが、実際には135kmもあり、列車で2時間半もかかるので、5時35分の始発「快速はなさき」に乗る。 眠いが次の列車が3時間後では仕方がない。 平日の早朝なので乗客は10人くらいである。 シートには丹頂鶴や灯台が描かれて、いかにも北海道らしい。
![]() 列車の座席 |
釧路を出発し、隣駅の東釧路で網走へ向かう釧網本線と分かれると、街から離れて丘陵地帯の樹林が30分ほど続く。 やがて白々と夜が明け、牧草地に変わって門静駅を通過すると太平洋に出て、アイカップ岬の断崖の右に大黒島が見えてきた。 東釧路駅からノンストップで44kmを走行し、厚岸に6時20分に到着。 それにしても北海道の列車は暖房が効きすぎていて暑いほどだ。
![]() アイカップ岬と大黒島 |
厚岸は上り下りが交換できる駅で、向いのホームには2両編成の釧路行きが停車していて、高校生が10人ほど乗っている。 釧路市街まで通っていて、部活の朝練があるのだろう。
![]() 厚岸駅 |
厚岸(アッケシ)とはアイヌ語で「カキのいるところ」を意味し、道の駅などで牡蠣のグルメが堪能できる。 牡蠣の殻が堆積してできたという鳥居が立つ島もあったりする。 名産の生ガキを食べたいと思うが下車する訳にはいかない。
![]() 牡蠣 |
厚岸でほとんどの乗客が下車して車内はガラ空きになったが、この先はこれぞ北海道と言える車窓だ。 厚岸湖を回り込むと別寒辺牛湿原の絶景が広がっており、ヨシが茂る川沿いを列車は進む。
![]() 車窓 |
外からも見たい衝動に駆られて、別日にこの周辺を歩いて散策してみた。
![]() 別寒辺牛湿原を走る列車 |
別寒辺牛湿原はラムサール条約の登録湿地に指定されていて、川は岸壁工事などが施されておらず、太古のままの風景だ。
![]() 別寒辺牛湿原 |
厚岸から25分ほどで霧多布への玄関口である浜中に着くと、ホームにルパン三世が立っている。 ここは原作者モンキーパンチ氏の故郷だという。
![]() 浜中駅 |
この路線には、ルパン三世の登場人物がラッピングされた車両も走っている。 花の湿原とも呼ばれる霧多布にも一度行ってみたい。
![]() ルパン三世のラッピング車両 |
かつて標津線(廃線)が発着していた厚床(あっとこ)に7時10分着。 かわいらしい名前の駅だ。 この列車は快速だが、ここから根室までの7駅はすべて停車する。 花咲線には何度か乗ったことがあるが、厚岸(あっけし)と厚床(あっとこ)は紛らわしい。 初田牛〜別当賀へと起伏のある原野を走り、再び海が見えてくる。 各駅で高校生を拾っていくと落石に7時38分到着。
![]() 落石駅 |
落石駅で高校生がたくさん乗り込んできた。 走り出すと樹間に太平洋に浮ぶ無人のユルリ島が見え隠れする。 ユルリ島はアイヌ語で「鵜が居る島」だが、野生の馬がいるという。
![]() 沖合いのユルリ島 |
落石の隣駅が昆布盛という名のとおり、この辺りは沖合いでの昆布漁が盛んなのだが、かつての船にはモーターがなかった。 そのため、獲れた昆布を本土まで運ぶ労力や手間がかかるので、ユルリ島に運び上げて干していたそうだ。 その際の労力として馬が必要だったのだが、モーター付きの船が普及すると、馬はユルリ島に置き去りにされたという。 一時は子孫が繁栄してたくさんの馬がいたそうだが、現在はかなり少ないなったらしい。
![]() ユルリ島と七つ岩 |
昆布盛駅をすぎると牧場の中を走り、大きな道産子馬がたくさん見える。 牧草地が多いのは海霧で作物が育たないのが理由らしい。
![]() 道産子馬 |
日本最東端駅である東根室に7時58分着。 鹿児島の西大山駅はシルエットの美しい開聞岳が見え、日本最南端駅に相応しいが、東根室駅は住宅地にあってイメージとは違う。 30〜40人ほどの高校生が全員下車、通学のための駅のようだ。 終点の根室駅には8時1分に到着。 納沙布岬行きのバス乗場へ向かう。
![]() 根室駅 |
納沙布岬行きのバスは8時20分発、15分ほど時間があるので近くを散策。 駅前はとても広いがガランとしている。 バスには往復の割引乗車券があるが、途中で降りるかもしれないので普通運賃で払うことにした。 市街地をすぎると笹の草原につくられたような道が続き、納沙布岬には9時5分に到着。
![]() 納沙布岬バス停 |
雲っていたが視界はまずまずで、歯舞諸島が見える。 納沙布岬は霧が出やすいと言うので運がよいのかも知れない。 まずは北方領土の歴史が学べる北方館、火が焚かれている四島のかけ橋などを見学する。
![]() 四島のかけ橋 |
明治5年、北海道で最初にできた灯台の裏に小屋が建っており、風が強いので避難すると野鳥の写真が展示してある。 「のさっぷ岬マップ」が貼ってあったので、参考にいろいろと見て回ることにした。
![]() 納沙布岬の標柱と灯台 |
地図と合わせて見ると、納沙布灯台の左が秋勇留島、さらに左へ順に萌茂尻島、勇留島、灯台が立つ貝殻島、水晶島と分かる。 とにかく、平坦な島ばかりである。 遠くには、国後島の爺爺(ちゃちゃ)岳、羅臼山も薄っすらと見えた。
![]() 納沙布岬灯台 |
納沙布岬から貝殻島まではたったの3.7km、水晶島までは7kmにすぎない。 水晶島にはロシア警備隊の監視所やレーダーも見える。
![]() 水晶島(左)と灯台が立つ貝殻島(右) |
貝殻島では昆布漁が許される時期があり、その様子を写したフォトコンテストの作品が展示してある。
![]() 貝殻島の昆布漁 |
朝から何も食べていないので空腹だ。 レストハウスが開いていたので、せっかくなので貝殻島で獲れた「貝殻昆布」の入ったラーメンを注文。 帰りのバスの時間までは1時間以上あるので、バス通りを行けるところまで歩いて、最東端を満喫することにする。
![]() レストハウス |
納沙布岬を後にして、歯舞地区への5kmほどを歩いていく。
![]() 納沙布岬を後にする |
北方領土を望める展望台である地上96mのオーロラタワーが目を引くが、その足下には本土最東端の納沙布神社がひっそりと建っている。
![]() オーロラタワーと納沙布神社 |
納沙布岬から20分ほど歩くと、珸瑤瑁(ごようまい)地区に入る。 本土最東端の珸瑤瑁小学校は閉校。 この辺りで子どもの姿をまったく見なかったが、昔はたくさんいたのだろう。 戦前の根室は千島への拠点でだったわけで…。
![]() 珸瑤瑁小学校 |
電柱には、「返せ!北方領土」の看板が並んでいる。 車は少し通るが、歩いている人はまったくいない。
![]() 返せ!北方領土 |
珸瑤瑁金刀比羅神社から5分ほど歩くと、郵便局が見えてきた。
![]() 金刀比羅神社 |
日本最東端の郵便局と建物にも表示されている。 記念に風景印を捺してもらう。
![]() 珸瑤瑁郵便局 |
風景印には、納沙布岬灯台と本土で一番早い朝日が描かれている。
![]() 珸瑤瑁郵便局の風景印 |
珸瑤瑁から歯舞地区に入ると海沿いに集落が見えるが、とても寂しい雰囲気だ。 貝殻島での昆布漁は、ここから出航するようである。
![]() 歯舞 |
バスの時刻が近づいてきたので、歩くのをやめてこの辺りを散策することに。 高台に建つ歯舞神社からは海を見渡せる。
![]() 歯舞神社 |
歯舞には郵便局、コンビニ、スナック、喫茶店などがあり、ここが最東端の街といった感じだ。 写真のスナック婆は、ママが婆さんなのだろうか、それとも意表をついてBARなのか。 隣には寿司屋もある。
![]() スナック |
歯舞郵便局の前からバスに乗ることにした。 右奥に見えるのは、最東端のガソリンスタンドだろうか。 12時3分のバスに乗り、根室駅へ戻る。
![]() 歯舞局前バス停 |
12時30分に根室市街で下車して、列車の時間まで1時間ほど適当に散策する。 地図に弁天島というのがあるので、坂道を下って港まで見に行く。 根室港を守る防波堤の役割をしている無人島で、神社が建っている。 その後も根室の街を歩くが、とにかくだだっ広くて、寂しい雰囲気が漂う。
![]() 弁天島 |
根室駅に13時すぎに戻ってきたが、釧路行きの列車は13時32分発である。 なので、最東端の旅のついでに、隣駅である東根室駅まで歩くことにした。 東根室は日本最東端駅だ。
![]() 根室駅 |
できるだけ線路から離れないように歩いていく。 跨線橋の上から東根室駅が見え、ちょうどよいタイミングで根室行きの列車がやってきた。 この折り返しに乗るのだが、時間が迫ってきたので軽く走って東根室駅へ向かう。
![]() 東根室駅と列車 |
13時30分に東根室駅に着く。住宅地にある駅である。 「にしわだ」の表示が新しいのは、隣駅だった花咲駅が最近廃止になったためだ。
![]() 東根室駅と列車 |
すぐに釧路行きの列車が来て乗車する。 先ほど跨線橋から見た車両だ。 平日の昼すぎで空いていたので、釧路までの2時間半、ゆったりと車窓が堪能できた。
![]() 東根室駅と列車 |
途中のトンネル内でエゾシカと接触があり、10分ほど遅れて釧路駅には16時に到着。 外に出ると雨が本降りになっていた。
![]() 釧路駅 |
旅行記 拙い文章ですが、お読みいただければ幸いです。 🌃函館元町の教会群と百万ドルの夜景 🌲渡島当別駅からトラピスト修道院へ 🐎日高本線で様似・襟裳岬へ 🌊釧路から本土最東端の納沙布岬へ |